マルチマグネトロンMW加熱における電磁波干渉と温度分布特性

大津 優斗1
1東京海洋大学大学院、〒108-8477、東京都港区港南4-5-7 4号館
Published in 2026

概要 複数食品の同時最適加熱において生じる複雑な電磁波干渉のメカニズム解明を目的とし、本研究では、固体・半固体・液体が混在する系における過渡的な伝熱・電磁挙動を予測可能な3次元熱・電磁界連成モデルを構築した。

各種設定及び計算条件 主食、主菜及び汁物を想定し、モデルとして米飯(180 g)、円柱状成形マッシュポテト(90 g)、および水(150 mL)の3種を用いた。これらを、マルチマグネトロを用いたマイクロ波加熱装置の異なるポジションに同時に配置し、各試料を実加熱時間、初期温度20℃の加熱条件を対象としてモデルを構築した。 物理モデルの構築には、アドオンモジュールであるRFモジュールの電磁波(周波数領域)インターフェースおよび伝熱モジュールの固体熱伝達(流体熱伝達を含む)インターフェースを使用し、電磁界・熱伝導連成解析(時間依存)を実行した。試料の熱物性および誘電特性には、試料組成および実測値に基づく温度依存性を導入した。また、マルチマグネトロンの周期的なON/OFFステップ制御に伴う不連続な高周波入力を安定して計算するため、補間関数を導入し、ポート境界(出力800 W、周波数2450 MHz)の時分割スケジューリングを厳密にモデル化した。実測データとの比較のため、モデル上で各試料の中心座標に温度プローブを設定し、得られた計算温度履歴と光ファイバー温度計による実測温度履歴とのRMSEを算出した。

結果 時間依存解析の結果、各試料の中心温度推移において、自ポジションに対応するポートがONとなる照射期間中の急激な昇温挙動と、非照射期間中の熱伝導による緩やかな温度変化を再現した。実測値と解析予測値は良好な一致を示し、構築したシミュレーションの妥当性が確認された。さらに、本モデルにより、照射期間中におけるマッシュポテト底面のスキンエフェクトを明瞭に可視化するとともに、非照射期間中においても、隣接ポートから漏洩した電磁波が他方の試料へ吸収される「干渉昇温プロセス」を視覚的かつ定量的に捉えることが可能となった。

結論 異なる物性を有する複数食品が庫内に混在するマルチマグネトロン加熱系において、食品の物性や配置が加熱均一性に及ぼす影響を明らかにするとともに、時分割駆動に伴う複雑な電磁干渉挙動や温度分布特性を高精度に予測・評価できる3次元電磁界・伝熱連成モデルを確立した。