音響メタマテリアルによる音響性能設計 ― 自動車防音材における遮音性能向上検討
音響メタマテリアル(AMM)は、適切に設計されたサブ波長スケールの構造によって、均質な材料とは異なる音響特性を示す人工材料である。本検討では、非通気性のPET板にアルミニウム円盤(付加マス)を波長の半分より短い間隔で周期配列した構造を扱う。このAMMは、質量則に従う均質な平板とは異なり、特定の帯域において、付加した質量から期待される値を上回る遮音性能を示す。
自動車防音材のうち特に高い防音性能が求められるダッシュサイレンサやフロアカーペットは、鉄板・多孔質材料・非通気中間層からなる積層構造である。この非通気中間層をAMMに置き換えることで、大幅な質量増加を伴わずに遮音性能を向上させることを狙った。
数値解析はCOMSOL Multiphysics 6.4を用い、アドオン製品としては音響モジュールのみを使用した。Pressure AcousticsとSolid Mechanicsをマルチフィジックスで連成して解析を行ったが、付加マスと板の振動および周囲の音場が強く相互作用する本問題では、この連成を扱えることが本質的に重要である。垂直入射条件では音響管を模擬したモデル、ランダム入射条件では残響室-無響室間開口を模擬したモデルを構築し、多孔質材料はPoroacousticsのJCAモデル、板と付加マスは線形弾性材料とした。なお、アプリケーションライブラリのモデルは使用していない。数値解析では音響透過損失の計算、遮音メカニズムの検討、設計のためのパラメータスタディを実施した。また、数値解析結果の妥当性を検証するため、音響実験室を用いて遮音性能を実測し、数値解析との比較を行った。
対象となる防音材の実測結果において、AMMを用いない一般的な仕様(面密度7.90 kg/m²)に対し、AMMを用いた仕様(8.96 kg/m²)は、1 kHz帯において約10 dB高い遮音性能を示した。なお、同等の質量増加から期待される向上幅は約1 dBである。数値解析でも同様に遮音性能の向上が認められ、実測と対応する結果となった。メカニズムの検討からは、付加マス部とそれ以外の領域の振動が互いの音響放射を打ち消していることが示された。このような多様かつ局所的な現象を利用した設計が必要であることから、音響メタマテリアルの設計・開発において数値解析が極めて重要かつ有益であると主張する。
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