LaB₆熱陰極を有する高密度アークプラズマ源の数値モデリング

蒲田 桂1, 宮内 礼那1, 松尾 太誠1, 東郷 訓1, 江角 直道1
1筑波大学プラズマ研究センター, 〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1
Published in 2026

核融合原型炉のダイバータ開発において高密度プラズマを生成可能な基礎実験装置を用いた研究が重要である。当グループでは原型炉で想定される1020 m-3台の高密度プラズマを模擬するための、LaB₆熱陰極を用いたアーク放電プラズマ源の開発を進めている。高密度プラズマ放電環境下では、プラズマとの衝突による中性ガスの加熱膨張や、電離に伴う中性粒子の枯渇が圧力分布に影響を及ぼすなど、非線形現象が顕在化することが知られている [1, 2]。 本研究の目的は、プラズマと中性ガスの相互作用を考慮した統合的な圧力分布予測の第一段階として、COMSOL Multiphysics®を用いてLaB₆熱陰極を用いたアーク放電プラズマ源 [3] の連成解析モデルを構築することである。 本解析ではプラズマモジュールを使用し、アプリケーションライブラリの「DC Glow Discharge」モデルをベースとした。高密度プラズマ生成に重要となる熱電子放出特性に優れたLaB₆熱陰極を仮定した境界へRichardson-Dushmanの式に基づく熱電子放出条件を与え、熱陰極アーク放電の解析モデルへと改修した。また、層流モジュールで算出したアルゴンガス圧の定常分布をプラズマ計算に結合させた。放電電流の違いによるプラズマの特性の変化を調べるため、外部回路のバラスト抵抗を1000 Ω から10 Ω へ低減させた。計算の発散を防ぐため、補助スイープ機能を用いて計算を行った。 解析の結果、バラスト抵抗の低減により放電電流が約0.12 A から約12 A へ増大し、電極間の電位差が約6.5 V から約4.5 V へ低下する特性が示され、アーク放電領域への遷移が確認された。中心部の電子密度は約2.7×10¹⁶ m⁻³から非線形に増加し、12 A 時には約3×10¹⁸ m⁻³ の比較的高密度の熱陰極アーク放電の形成が再現された (Fig. 1, 2)。さらに、入射ガス圧力の違いにより、電子密度のピーク値や軸方向分布が変化することが示された (Fig. 3)。 本モデルは、アーク放電の特性を定性的に再現し、プラズマ生成に伴う空間的なパラメータ変化を捕捉した。なお、本計算は無磁場条件で行った。今後は静磁場を考慮するとともに、本モデルを拡張し、プラズマ存在下における装置内の圧力分布変動予測と差動排気設計の最適化への適用を目指す。